Nikon F はその堅牢さで知られていますが、発売から長い年月が経っているため、内部の油切れやカムまわりの汚れが原因で動作が不安定になることがあります。しっかりとした造りのカメラではありますが、整備の現場では「力強さの裏に細かい調整が必要な部分が多い」という印象を持っています。
壊れやすい箇所としては、低速ガバナーやシャッターのタイミング機構など、速度を制御する部分が挙げられます。ここに汚れや摩耗があると、低速でミラーアップ後に止まってしまったり、一部速度だけ不安定になることがあります。また、プリズムの腐食も年式相応に多い症状で、黒い斑点として視界に現れます。
今回の個体では、低速でシャッターボタンを押した際にミラーアップで止まり、指を離すとガバナーが動き始めるという状態でした。バルブから他の速度に切り替えたときに顕著に現れる症状で、注油では改善せず、シャッターダイヤルユニットを外してカムまわりを清掃したものの、一部速度(1/8)だけ停止したり、動作が安定しない場面が見られました。また、高速ではミラー上りがわずかに遅く、1/500 や 1/1000 でミラー切れが起きる状態でした。
ここからは、Nikon F でよく見られる不具合について、今回の症状を交えながらお話しします。
ニコンFのよくある故障
シャッター/低速ガバナーまわり

Nikon F では、低速ガバナーに汚れが溜まったり、カムまわりの油が切れてくると、速度の制御が不安定になります。低速だけミラーアップ後に止まる、あるいは特定の速度だけ動きが乱れるといった症状は、この部分が原因のことが多いです。
今回の個体でも、1/8 秒での停止や、低速でシャッターボタンを離すとやっと動き始める挙動が見られ、典型的なガバナー周辺の不調でした。
ミラー機構

ミラーの上りが遅れ気味になると、高速でミラー切れが発生することがあります。シャッターは走っているのにミラーの動作が追いつかず、像が欠けて写る状態です。
ミラー関連のレバーや軸のわずかな汚れが原因になることが多く、経年で少しずつ動きが重くなっていきます。今回も 1/500 と 1/1000 でミラー切れが確認され、動作の連携が弱くなっていました。
ファインダー/プリズム
Nikon F はプリズムの腐食が多い機種です。黒い斑点として視界に現れ、進行している場合は交換が必要になります。特にフォトミックファインダーを使う場合、露出計側の経年劣化も重なり、針が不安定になる例も多く見られます。
巻き上げ機構

巻き上げの重さや引っかかりが出ることがあります。これはカムの汚れや摩耗、油切れが原因で、シャッター系の不調とあわせて現れることが多い症状です。全体を整えることで改善する場合がほとんどです。
その他
モルトの劣化は避けられず、光漏れの原因になります。また、外装やネジの固着など、年数を重ねた個体では少しずつ整えるべき部分が増えていきます。
ニコンFの修理内容について
今回の個体では、低速シャッター時にミラーアップで止まり、指を離したあとにガバナーが動き出すという症状がありました。まずは低速ガバナーとシャッターダイヤルユニットまわりの状態を確認し、カムや連動部の汚れを丁寧に落とし、必要な箇所へ油を差しています。ただ、汚れ落としだけでは改善が不十分で、1/8 秒の停止など速度ごとのばらつきが残る場面が見られたため、各部の動きをひとつずつ確認しながら調整を進めました。
ミラー上りについては、動きがわずかに遅れ気味で、高速シャッターとの連携が弱くなっていました。これが原因で 1/500 や 1/1000 でミラー切れが発生していたため、ミラー作動レバーや軸の汚れを取り除き、動作が素直に戻るよう整えています。ミラーの挙動は見た目以上に繊細で、わずかな汚れで動作タイミングがずれることがあります。
プリズムについても、年式相応の点検が必要でした。黒斑や腐食が進んでいる場合は交換となり、清掃だけで取りきれない症状も多い部分です。今回も状態を確認したうえで、実用に支障のない見え方に整えています。
巻き上げ機構は、シャッター側の不調と関連して動きに重さや不均一さが出ていたため、こちらも合わせて清掃と調整を行いました。巻き上げの滑らかさは、Nikon F において整備後に体感していただきやすい部分です。
Nikon F は堅牢な構造ではありますが、シャッター幕や主要なユニット交換が難しく、カムやガバナーの摩耗が進んでいる場合には完全な改善が難しいことがあります。今回の個体は汚れ由来の不具合が中心でしたので、現状で安定して使える状態に整えることができました。
ニコンFの修理代の相場は?修理当社は安い?
ニコンFは一眼レフの料金帯です。
ニコンFEやオリンパスOM1など機械式一眼レフフィルムカメラを、すべて点検して修理する「総合修理」した場合の相場価格です。各社ほとんどが税抜表示でしたので、税込み価格で統一しています。
一眼レフ : 総合修理
平均相場価格(税込み)
18,529円
| A社:19,800円~ | G社:19,800円~ | M社:14,300円~ |
| B社:19,800円~ | H社:非公開 | N社:19,800円~ |
| C社:19,800円~ | I社:17,600円~ | O社:16,500円~ |
| D社:24,200円~ | J社:22,000円~ | P社:19,800円~ |
| E社: 5,500円~ | K社:25,300円~ | |
| F社:15,180円~ | L社:非公開 |
かもめカメラ当社かもめカメラは、一眼レフの全体修理をお受けしております。料金個々の状況により、上記よりも安くなる場合もあれば、そうでないケースもあります。誠実なお見積りを心がけておりますので一度お問い合わせください。
当社の修理が、おすすめできる理由は「かもめカメラ5つのお約束」をご覧ください!きっとご満足いただける修理をご提供できます。
フィルムカメラ修理の値段はなぜバラバラ?
フィルムカメラの修理はメーカーや国が作った資格のない仕事です。唯一信頼できるのが、今は70歳か80歳くらいになったメーカーの研修を受けたエンジニアの方たちの経験と知識です。かもめカメラはニコン、オリンパス、ペンタックス、キャノンなどのメーカー研修を受けた技術者から直接指導を受けて、検査機を使って修理調整しています。
資格がなくても修理ができる業界なので、趣味で修理をしている方や、最近では転売をしている方が作ったカメラ修理士という独自の名称で修理を受け付けている方もいます。
それで残念ながら価格や技術がバラバラで一律した基準がなかなかない比較しにくい現状があります。
◆◆のオーバーホール料金
オーバーホールの定義は、部品全てを分解して修理するというものかもしません。でもカメラの場合は、分解してはいけない場所もあります。ミリ単位で調整がしてあり、触るとかえっておかしくなってしまう部品箇所があるんです。
それで、各修理屋さんでオーバーホールの意味合いが違うと思います。
かもめカメラではオーバーホールを総合修理という言い方にしています。全体の検査を行い、機能を損なわない箇所まで分解し、清掃・注油・設定調整を行います。
古いフィルムカメラをどこまで修理するか?
フィルムカメラ修理は手を抜こうと思うとたくさん妥協できるところがある修理業種です。でも手を抜いていくと、露出が暗くなってしまったり明るすぎてしまったり、使い心地が枠瑠なったり、しばらくすると調子が悪くなったりしてしまいます。例えば以下のような残念なことがよく起きます。
よくあるフィルムカメラ修理の残念な事例
手を抜いてしまう修理だと、一応動くけどなんだかおかしい・・・ということがよくあります。例えば・・・
- モルトの劣化が見逃され、撮影状況によっては感光光線漏れする
- 1枚1枚のコマ間が大きくずれている
- 速度が不正確で高速になればなるほど遅くなり、全体が開かないこともある
- 露出計の表示が不正確で、その表示に合わせて設定をすると暗すぎ明るすぎな写真になる
- 配線が繋がっているがギリギリ首の皮一枚の状態でしばらくすると電気系が動かなくなる
- 各操作部品の掃除がされておらず、操作感が気持ち悪い
修理に出して帰ってきたカメラを触っても比較するものがないので、フィルムカメラ初心者の方はこのようなおかしさがわからないことが多いです。『なんだかおかしい・・』とわかってきたころには保証期間が終わってしまい諦めてしまうこともよく聞く話です。
かもめカメラの5つのお約束
フィルムカメラ修理は業界の資格や規定などがないので、明確な決まりごとのないサービスです。修理屋さんによって修理の質や出来上がる写真に大きな違いがでるので、料金の安さだけで比較することはおすすめできません。安心して修理をご依頼いただくために、かもめカメラでは「5つのお約束」を独自に設定しております。
当社かもめカメラの修理料金は相場よりも1,000円ほど高いことがあるかもしれませんが、コスパを考えると絶対にお安いとおすすめできます!
① 6か月保証いたします
日本には四季があり、同じ場所でも温度や湿度が大きく変化します。それで古いフィルムカメラは、冬場はきちんと動いていたのに、夏になったら動かなくなるということがよくあります。かもめカメラでは長期の使用に耐えられることを念頭において修理しています。それで修理終了時期から、季節が変わるであろう半年間を無料保証期間としています。修理が終わったカメラを、半年間たっぷり使って調子を試してください。
② 専用検査機を使って調整します


きれいな写真、自分の思い通りの写真を撮るには、カメラの「シャッター速度・露出計の動作・絞りの動作」この3つがしっかり連動する必要があります。
この3つが正常に動いているかは、人間の眼では確認できないことがほとんどです。専用の試験機で、数値で表示させないととわかりません。この試験機が7桁近くする高価なもので、現在日本で製造しているメーカーもほとんどありません(もうないといってもいい状況です)。
かもめカメラではすべての修理を試験機にかけて調整しています。
③ 検査修理票をお付けします


かもめカメラでは修理をしながら、試験機で行った検査の結果数値とその他目視で行う動作確認を修理票にまとめながら修理を行っています。
そのカメラのシャッター速度や、オートで撮った時の露出計の状態などを数値で表示したものです。
この修理票をお付けしてお返しします。通常では修理屋さんでは絶対にお客様にお見せしないものですが、お客様に安心してお使いいただくために、かもめカメラでは修理票の実物コピーをお付けします。
④ 見て見ぬふりはしません
古いフィルムカメラの修理をしていると言い方がわるいですが、このまま修理しないでお返ししても「きっとお客様は気づかない箇所」がたくさんでてきます。少なくとも保証期間内は影響がでないだろうと思われる箇所もあります。
かもめカメラではこうした箇所も、見過ごさずしっかりと整備いたします、これは性分です。きちんと整備し、修理票に記録してお返しします。
またそれに伴い追加の部品交換などの必要が出た場合もお客様にご相談して対応いたします。
⑤ 全体をクリーニングしてお返しします
かもめカメラは動作・機能を回復させるところまでで完成とは考えておりません。数十年たったカメラを気持ちよく利用していただくために、外装もできる限りのクリーニングをしてお返しします。かなりきれいになります!お楽しみに!!もちろん最後に除菌も行って送付いたします。
追加料金になりますが、ご希望によってお好きなカラーで張り替えることもできますのでご相談ください。
かもめカメラのフィルムカメラ修理の料金一覧
当社かもめカメラは、全体修理をお受けしております。以前は以下に具体的な金額を入れておりましたが、料金個々の状況により、上記よりも安くなる場合もあれば、そうでないケースもあります。それでここに価格は個々にお見積りさせていただくこととしました。誠実なお見積りを心がけておりますので一度お問い合わせください。
| 一眼レフ | お見積り下さい |
| レンジファインダー機 | お見積り下さい |
| コンパクト機 | お見積り下さい |
| モルト交換 | お見積り下さい |
| その他部分修理 | お見積り下さい |
| レザー張り替え | お見積り下さい |





