Nikon FM2は、1980年代に登場した機械式一眼レフの代表的なモデルです。露出計以外はすべて機械制御で動作し、電池がなくても撮影できる信頼性の高さが魅力です。
しかし発売から40年以上が経ち、内部の油やゴム部品の劣化、シャッター幕の変形など、経年による不具合が増えてきています。
本ページでは、FM2でよく見られる故障例や修理の可否、整備費用の目安について、実際の整備経験をもとにまとめます。
Nikon FM2のよくある故障
Nikon FM2は信頼性の高い機械式シャッター機ですが、長年の使用や保管環境の影響でいくつかの典型的なトラブルが見られます。代表的な症状を挙げます。
とても大切な補足ありがとうございます。
実際の整備経験に即した流れとして、もっとも頻度の高いトラブルを中心に据えた文に書き換えました。
FM2のシャッターの不具合

FM2のシャッターは、機械式として非常に精密に作られていますが、経年により動作が不安定になることがあります。
もっとも多いのは、シャッター機構内部のグリスが固まり、動作が粘ってしまう症状です。特にシャッター上部に貼られたモルトが加水分解して粉状になり、その汚れが混入して動作が重くなることがあります。これが原因で、巻き上げと同時にシャッターが切れてしまう、あるいは開いたまま止まるといった不具合が起こります。ひどい場合は巻き上げ自体ができなくなることもあります。
こうした場合は分解して汚れを除去し、古い油を洗浄してから再注油を行うことで、動作が軽快に戻ることが多いです。
一方で、シャッター幕の変形や損傷も見られます。FM2の幕は非常に薄く繊細で、フィルムが噛んだり、誤って指で触れるだけでも羽根が曲がってしまうことがあります。この場合は調整では直らず、交換が必要になりますが、現在は純正部品が入手困難なため、中古部品を探して対応する形になります。入手できても価格が高く、他個体からの移植でしか修理できないこともあります。
FM2の特徴である1/4000秒の高速シャッターは、設計上ごく僅かな摩耗や汚れでも精度に影響します。清掃と調整で安定させることはできますが、経年個体では新品時の精度を完全に再現することは難しく、実用上の安定性を重視して整えるのが現実的です。
露出計・電気系

FM2の露出計は機械式ボディの中で唯一電気を使う部分で、ここが正常に動いているかどうかが、整備時の確認ポイントの一つです。
よく見られるのは、露出計が「+」側に振り切れたまま動かない症状です。これは内部の基板不良によるもので、調整や清掃では直らず、交換が必要になります。純正部品の供給はすでに終了しているため、現実的には中古部品の移植対応となります。
また、電池室や配線の接触不良でメーターが不安定になることもあります。軽度であれば清掃や接点の磨きで改善しますが、配線の劣化やハンダ割れがある場合は修復が必要です。
露出計の動作は、測定値そのものよりも“安定して動くか”が重要です。全体整備では、清掃と電圧確認、指針の動作チェックを行い、露出が実用範囲内に収まるように調整します。
ファインダー・ミラー系

FM2のファインダーは明るく見やすい設計ですが、長年の使用や保管環境によって、内部に曇りやゴミの付着が生じることがあります。ファインダーの見えにくさは使用感に直結するため、整備ではこの部分の清掃を丁寧に行います。
また、絞り値を表示するための小さなミラーが脱落している個体もあります。このミラーがボディ内部でずれると、ミラーアップ動作や巻き上げに影響を及ぼすことがあります。脱落していても再固定で対応できる場合が多く、位置調整を含めた整備で改善します。
フォーカシングスクリーン上の曇りやホコリもよく見られる症状です。清掃によりすっきりとした視界を取り戻せます。ファインダー周りは動作に関わる部分ではありませんが、「見える気持ちよさ」は使ううえで大きな違いになります。
巻き上げ・巻き戻し機構
FM2で巻き上げが重い、あるいは途中で止まってしまうという相談はよくあります。
シャッター機構上部にモルトの加水分解による粉や汚れが入り込むことで、巻き上げとシャッターの連動がうまく働かなくなり、シャッターが途中で止まる、チャージが効かないといった症状を起こします。ひどい場合は巻き上げ自体ができなくなることもあります。
分解して汚れと古い油を除去し、動作部を洗浄・注油すると多くの場合は軽快に動くようになります。機械的な損傷よりも「汚れによる動作不良」の方が圧倒的に多く、早めに整備を行うことで大きな故障を防げます。
外装・モルト関係

FM2では、モルト(遮光材)の劣化はほぼ避けられません。モルトが加水分解すると、黒い粉や粘着状のカスとなってファインダーやシャッター羽根の隙間に入り込み、動作不良の原因にもなります。整備では、すべての古いモルトを除去し、新しい遮光材を貼り直します。
外装はアルミ地の仕上げが多く、手の油や汚れが長年のうちに固着していることがあります。洗浄の際は表面の風合いを損ねないよう、強すぎない溶剤で丁寧に清掃します。
フィルム室内も、モルトの残りや細かいゴミが残っていることがあるため、分解清掃のついでに整えておくと安心です。整備後は見た目も手触りもすっきりした印象になります。
Nikon FM2の修理内容について

FM2の整備では、まず全体の動作を確認したうえで、分解清掃を中心に進めます。
古い油やモルトくずを取り除き、各部を適正に注油・調整することで、動作が軽く安定します。
主な整備内容は以下のとおりです。
- ファインダークリーニング
- 露出計チェックと整備
- シャッター速度確認と調整
- 各部の洗浄と注油
- 動作機構全体の確認と調整
- フィルム室のクリーニング
- 外装のクリーニング
- モルトを新品に張り替え
整備後は巻き上げやシャッターの動きが軽快になり、ファインダーの見え方もすっきりします。
FM2は基本構造がしっかりしているため、定期的に整えておくことで、今後も長く使い続けることができます。
まとめ
Nikon FM2は、今でも多くの方に愛用されている信頼性の高い機械式カメラです。
構造がしっかりしているため、大きく損傷していなければ、分解清掃と調整で動作を安定させることができます。
一方で、シャッター幕や露出計など、部品の入手が難しい箇所もあり、修理が困難になるケースもあります。
特にシャッター幕の損傷は交換が前提となるため、無理な操作を避け、早めの点検をおすすめします。
整備を行うことで巻き上げやシャッターの感触が軽くなり、ファインダーの視界もすっきりします。
今後も長く使い続けるためには、定期的な整備を行い、機械を「よい状態で保つ」ことが大切です。
Nikon FM2の修理代の相場は?修理当社は安い?
ニコンFEやオリンパスOM1など機械式一眼レフフィルムカメラを、すべて点検して修理する「総合修理」した場合の相場価格です。各社ほとんどが税抜表示でしたので、税込み価格で統一しています。
一眼レフ : 総合修理
平均相場価格(税込み)
18,529円
| A社:19,800円~ | G社:19,800円~ | M社:14,300円~ |
| B社:19,800円~ | H社:非公開 | N社:19,800円~ |
| C社:19,800円~ | I社:17,600円~ | O社:16,500円~ |
| D社:24,200円~ | J社:22,000円~ | P社:19,800円~ |
| E社: 5,500円~ | K社:25,300円~ | |
| F社:15,180円~ | L社:非公開 |
かもめカメラ当社かもめカメラは、一眼レフの全体修理をお受けしております。料金個々の状況により、上記よりも安くなる場合もあれば、そうでないケースもあります。誠実なお見積りを心がけておりますので一度お問い合わせください。
当社の修理が、おすすめできる理由は「かもめカメラ5つのお約束」をご覧ください!きっとご満足いただける修理をご提供できます。
フィルムカメラ修理の値段はなぜバラバラ?
フィルムカメラの修理はメーカーや国が作った資格のない仕事です。唯一信頼できるのが、今は70歳か80歳くらいになったメーカーの研修を受けたエンジニアの方たちの経験と知識です。かもめカメラはニコン、オリンパス、ペンタックス、キャノンなどのメーカー研修を受けた技術者から直接指導を受けて、検査機を使って修理調整しています。
資格がなくても修理ができる業界なので、趣味で修理をしている方や、最近では転売をしている方が作ったカメラ修理士という独自の名称で修理を受け付けている方もいます。
それで残念ながら価格や技術がバラバラで一律した基準がなかなかない比較しにくい現状があります。
Nikon FM2のオーバーホール料金
オーバーホールの定義は、部品全てを分解して修理するというものかもしません。でもカメラの場合は、分解してはいけない場所もあります。ミリ単位で調整がしてあり、触るとかえっておかしくなってしまう部品箇所があるんです。
それで、各修理屋さんでオーバーホールの意味合いが違うと思います。
かもめカメラではオーバーホールを総合修理という言い方にしています。全体の検査を行い、機能を損なわない箇所まで分解し、清掃・注油・設定調整を行います。
古いフィルムカメラをどこまで修理するか?
フィルムカメラ修理は手を抜こうと思うとたくさん妥協できるところがある修理業種です。でも手を抜いていくと、露出が暗くなってしまったり明るすぎてしまったり、使い心地が枠瑠なったり、しばらくすると調子が悪くなったりしてしまいます。例えば以下のような残念なことがよく起きます。
よくあるフィルムカメラ修理の残念な事例
手を抜いてしまう修理だと、一応動くけどなんだかおかしい・・・ということがよくあります。例えば・・・
- モルトの劣化が見逃され、撮影状況によっては感光光線漏れする
- 1枚1枚のコマ間が大きくずれている
- 速度が不正確で高速になればなるほど遅くなり、全体が開かないこともある
- 露出計の表示が不正確で、その表示に合わせて設定をすると暗すぎ明るすぎな写真になる
- 配線が繋がっているがギリギリ首の皮一枚の状態でしばらくすると電気系が動かなくなる
- 各操作部品の掃除がされておらず、操作感が気持ち悪い
修理に出して帰ってきたカメラを触っても比較するものがないので、フィルムカメラ初心者の方はこのようなおかしさがわからないことが多いです。『なんだかおかしい・・』とわかってきたころには保証期間が終わってしまい諦めてしまうこともよく聞く話です。
かもめカメラの5つのお約束
フィルムカメラ修理は業界の資格や規定などがないので、明確な決まりごとのないサービスです。修理屋さんによって修理の質や出来上がる写真に大きな違いがでるので、料金の安さだけで比較することはおすすめできません。安心して修理をご依頼いただくために、かもめカメラでは「5つのお約束」を独自に設定しております。
当社かもめカメラの修理料金は相場よりも1,000円ほど高いことがあるかもしれませんが、コスパを考えると絶対にお安いとおすすめできます!
① 6か月保証いたします
日本には四季があり、同じ場所でも温度や湿度が大きく変化します。それで古いフィルムカメラは、冬場はきちんと動いていたのに、夏になったら動かなくなるということがよくあります。かもめカメラでは長期の使用に耐えられることを念頭において修理しています。それで修理終了時期から、季節が変わるであろう半年間を無料保証期間としています。修理が終わったカメラを、半年間たっぷり使って調子を試してください。
② 専用検査機を使って調整します


きれいな写真、自分の思い通りの写真を撮るには、カメラの「シャッター速度・露出計の動作・絞りの動作」この3つがしっかり連動する必要があります。
この3つが正常に動いているかは、人間の眼では確認できないことがほとんどです。専用の試験機で、数値で表示させないととわかりません。この試験機が7桁近くする高価なもので、現在日本で製造しているメーカーもほとんどありません(もうないといってもいい状況です)。
かもめカメラではすべての修理を試験機にかけて調整しています。
③ 検査修理票をお付けします


かもめカメラでは修理をしながら、試験機で行った検査の結果数値とその他目視で行う動作確認を修理票にまとめながら修理を行っています。
そのカメラのシャッター速度や、オートで撮った時の露出計の状態などを数値で表示したものです。
この修理票をお付けしてお返しします。通常では修理屋さんでは絶対にお客様にお見せしないものですが、お客様に安心してお使いいただくために、かもめカメラでは修理票の実物コピーをお付けします。
④ 見て見ぬふりはしません
古いフィルムカメラの修理をしていると言い方がわるいですが、このまま修理しないでお返ししても「きっとお客様は気づかない箇所」がたくさんでてきます。少なくとも保証期間内は影響がでないだろうと思われる箇所もあります。
かもめカメラではこうした箇所も、見過ごさずしっかりと整備いたします、これは性分です。きちんと整備し、修理票に記録してお返しします。
またそれに伴い追加の部品交換などの必要が出た場合もお客様にご相談して対応いたします。
⑤ 全体をクリーニングしてお返しします
かもめカメラは動作・機能を回復させるところまでで完成とは考えておりません。数十年たったカメラを気持ちよく利用していただくために、外装もできる限りのクリーニングをしてお返しします。かなりきれいになります!お楽しみに!!もちろん最後に除菌も行って送付いたします。
追加料金になりますが、ご希望によってお好きなカラーで張り替えることもできますのでご相談ください。
かもめカメラのフィルムカメラ修理の料金一覧
当社かもめカメラは、全体修理をお受けしております。以前は以下に具体的な金額を入れておりましたが、料金個々の状況により、上記よりも安くなる場合もあれば、そうでないケースもあります。それでここに価格は個々にお見積りさせていただくこととしました。誠実なお見積りを心がけておりますので一度お問い合わせください。
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