PENTAX SLは、露出計を持たないシンプルな一眼レフです。余計な機能を削ぎ落とした分、機械としての完成度が高く、作りの確かさを感じるカメラです。
構造が単純なぶん、故障の箇所も限られています。しっかり整備をすれば、今でも安心して撮影に使える実用機といえます。
幕や油切れといった経年の劣化を整えてあげるだけで、本来の軽快な動きを取り戻すことができます。
古いカメラですが、部品の調整や幕交換も可能です。「直せるうちに整えておきたい」と思われた方は、まずは状態を見せていただければと思います。ここでは、PENTAX SLによく見られる症状や整備のポイントをご紹介します。
PENTAX SLのよくある故障
PENTAX SLは露出計を持たないため、構造が単純で故障箇所も限られています。ただし、長期間の使用や保管状態によっては、油切れや幕の劣化といった経年変化が起こります。ここでは、整備の現場でよく見かける症状をまとめました。
1. シャッターの故障

① 油切れによるシャッター速度低下
古いグリスが乾いてしまうと、シャッターの動きが重くなり、特に高速側で幕が開かないことがあります。
整備では、古い油を丁寧に除去し、新しいグリスを適量注油して動きを取り戻します。
② 幕走行の不均一・高速で開かないトラブル
幕のテンションバランスが崩れると、走行が不均一になり、片側が先に閉じてしまうことがあります。この症状は、幕の張りを強くしすぎたり、古い油の抵抗が残っている場合にも起こります。調整は慎重に行いすぎると幕を痛めてしまうため、負荷をかけすぎないようテンションを見極めます。
③ テンション調整の不適切による巻きすぎ・劣化
シャッター速度を無理に出そうとして強くテンションをかけすぎると、軸やスプリングを傷めてしまいます。特にSLのような古い機種では、金属疲労が進んでいる個体も多いため、無理な調整は禁物です。速度を厳密に追い込むよりも、幕が全域で安定して走ることを優先します。多少の速度差があっても、角速度が均一に保たれていれば、結果として安定した露光につながります。
2. スローガバナの動作不良
① グリス切れによる動作停止
長期間使われていない個体では、スローガバナ内部のグリスが固着し、低速シャッターが動作しなくなることがあります。部品を分解して古いグリスを丁寧に除去し、適量の新しい油を差すことで、動作を取り戻すことができます。古いグリスの残りがわずかでもあると動きが鈍くなるため、清掃の徹底が仕上がりを左右します。
② 異音・不安定なシャッタータイム
スローガバナの動きが鈍くなると、シャッターを切った際に「ジーッ」という異音が出たり、低速時の動作が不安定になります。このような症状は、内部の摩耗や汚れの影響が重なっていることが多く、単純な注油では安定しない場合があります。
整備では、部品の状態を確認しながら、できる範囲で滑らかに動作するよう調整を行います。古い機械らしい味を残しつつ、撮影に支障が出ない状態に整えるのが理想です。
3. 巻き上げ機構の不具合
① 油切れで重くなる巻き上げ
巻き上げレバーの軸やギア部分の油が乾いていると、操作時に重く感じられることがあります。無理に力をかけて動かすと、内部のラチェットや軸を痛めてしまう場合があります。
整備では、分解して古い油を落とし、適切な箇所に少量の注油を行うことで動きを滑らかにします。ただし、部品の摩耗が進んでいる個体では、完全に新しい感触には戻らないこともあります。
② 途中で引っかかる・空回り
巻き上げ途中で引っかかる、またはレバーを回してもシャッターが巻けない場合、内部のギア摩耗やスプリングの劣化が原因のことがあります。軽い症状であれば清掃と注油で改善しますが、部品の摩耗が進んでいる場合は調整範囲を超えることもあります。
整備では、負担をかけずに動作できる範囲を見極めて仕上げることを心がけます。無理に“新品のように”するよりも、今の状態を長く保てるように整えるという考え方が大切です。
ファインダーやスクリーンの劣化や汚れ

① ファインダー内のチリやゴミの混入
長年の使用で、プリズム上やファインダー内にチリやゴミが入り込むことがあります。撮影結果には影響しませんが、見え方に違和感を感じることがあります。整備時にはできる限り清掃を行い、可能な限りクリアな視界に整えます。
ただし、汚れの跡やスクリーンの擦れ跡など、取りきれない部分が残ることもあります。そうした微細な跡は、経年を経た個体ならではの風合いとして受け止めてもよい部分です。
② ミラー面の曇り・反射の劣化
ミラーの反射面が曇っていたり、腐食している個体も見られます。軽い曇りであれば清掃である程度改善しますが、銀面自体が劣化している場合は交換が必要です。
ただし、多少の腐食があってもファインダー越しの見え方にはほとんど影響がなく、撮影結果にも全く影響しません。整備では、清掃によって視認性をできる限り確保し、安心して使える状態に整えます。
5. 幕の劣化・破れ

① 経年による幕の硬化・ピンホール
シャッター幕はゴム引き布で作られており、経年によって硬化や縮み、ひび割れが起こることがあります。特に長期間巻き上げたまま保管された個体では、幕にテンションがかかった状態が続き、劣化が進みやすくなります。ピンホール(小さな光漏れ)が発生した場合は、撮影に影響するため整備が必要です。軽度のものであれば補修で対応できることもありますが、広範囲に劣化が見られる場合は幕交換が確実です。
② 幕交換が必要なケース
幕が硬化していたり、ピンホールが複数見られる場合は、交換が必要になります。PENTAX SLは構造が比較的整備しやすく、幕交換によってしっかりと動作を取り戻すことができます。交換後は幕のテンションを調整し、走行の均一性と速度のバランスを確認しながら仕上げます。古いカメラではありますが、幕交換を行えばまだまだ実用として楽しめる個体が多い機種です。
まとめ
PENTAX SLは、電気的な要素を持たない機械式カメラの中でも、特に堅実なつくりをしています。露出計がない分、構造が単純で、手を入れれば動作を取り戻すことができる個体が多いのが特徴です。整備では、古い油や硬化した部品をひとつずつ整えながら、安定して動く状態に仕上げていきます。
修理をすれば、すぐに新品のようになるというものではありませんが、適切に整えれば、今でも十分に使える機械です。「もう少し使ってみたい」と思われた方は、状態の確認だけでもご相談ください。
PENTAX SLの修理内容について
SLのように古いカメラは、長年の使用や保管によって各部に汚れや油切れが見られることがあります。そのため当工房では、安心してお使いいただくために全点検整備をおすすめしています。外観だけでなく、内部の細かな動作まで一度確認し、必要な整備を行います。
部分的な修理にも対応していますが、古いカメラでは一部の不具合が他の箇所に影響している場合もあります。そのため、できるだけ全体の点検整備を行うことで、安心して長くお使いいただける状態に整えることをおすすめしています。
【実際に行う具体的な整備内容の一部】
- ファインダーのクリーニング
- ミラーユニットまわりの洗浄と注油
- スローガバナーまわりの洗浄と注油
- シャッターユニットまわりの洗浄と注油
- ギアまわりの洗浄と注油
- シャッター速度確認と調整
- 動作機構全体の確認と調整
- フィルム室クリーニング
- 外装クリーニング
- モルト(遮光材)の新品張替
PENTAX SLの修理代の相場は?修理当社は安い?
ニコンFEやオリンパスOM1など機械式一眼レフフィルムカメラを、すべて点検して修理する「総合修理」した場合の相場価格です。各社ほとんどが税抜表示でしたので、税込み価格で統一しています。
一眼レフ : 総合修理
平均相場価格(税込み)
18,529円
| A社:19,800円~ | G社:19,800円~ | M社:14,300円~ |
| B社:19,800円~ | H社:非公開 | N社:19,800円~ |
| C社:19,800円~ | I社:17,600円~ | O社:16,500円~ |
| D社:24,200円~ | J社:22,000円~ | P社:19,800円~ |
| E社: 5,500円~ | K社:25,300円~ | |
| F社:15,180円~ | L社:非公開 |
かもめカメラ当社かもめカメラは、一眼レフの全体修理をお受けしております。料金個々の状況により、上記よりも安くなる場合もあれば、そうでないケースもあります。誠実なお見積りを心がけておりますので一度お問い合わせください。
当社の修理が、おすすめできる理由は「かもめカメラ5つのお約束」をご覧ください!きっとご満足いただける修理をご提供できます。
フィルムカメラ修理の値段はなぜバラバラ?
フィルムカメラの修理はメーカーや国が作った資格のない仕事です。唯一信頼できるのが、今は70歳か80歳くらいになったメーカーの研修を受けたエンジニアの方たちの経験と知識です。かもめカメラはニコン、オリンパス、ペンタックス、キャノンなどのメーカー研修を受けた技術者から直接指導を受けて、検査機を使って修理調整しています。
資格がなくても修理ができる業界なので、趣味で修理をしている方や、最近では転売をしている方が作ったカメラ修理士という独自の名称で修理を受け付けている方もいます。
それで残念ながら価格や技術がバラバラで一律した基準がなかなかない比較しにくい現状があります。
PENTAX SLのオーバーホール料金
オーバーホールの定義は、部品全てを分解して修理するというものかもしません。でもカメラの場合は、分解してはいけない場所もあります。ミリ単位で調整がしてあり、触るとかえっておかしくなってしまう部品箇所があるんです。
それで、各修理屋さんでオーバーホールの意味合いが違うと思います。
かもめカメラではオーバーホールを総合修理という言い方にしています。全体の検査を行い、機能を損なわない箇所まで分解し、清掃・注油・設定調整を行います。
古いフィルムカメラをどこまで修理するか?
フィルムカメラ修理は手を抜こうと思うとたくさん妥協できるところがある修理業種です。でも手を抜いていくと、露出が暗くなってしまったり明るすぎてしまったり、使い心地が枠瑠なったり、しばらくすると調子が悪くなったりしてしまいます。例えば以下のような残念なことがよく起きます。
よくあるフィルムカメラ修理の残念な事例
手を抜いてしまう修理だと、一応動くけどなんだかおかしい・・・ということがよくあります。例えば・・・
- モルトの劣化が見逃され、撮影状況によっては感光光線漏れする
- 1枚1枚のコマ間が大きくずれている
- 速度が不正確で高速になればなるほど遅くなり、全体が開かないこともある
- 露出計の表示が不正確で、その表示に合わせて設定をすると暗すぎ明るすぎな写真になる
- 配線が繋がっているがギリギリ首の皮一枚の状態でしばらくすると電気系が動かなくなる
- 各操作部品の掃除がされておらず、操作感が気持ち悪い
修理に出して帰ってきたカメラを触っても比較するものがないので、フィルムカメラ初心者の方はこのようなおかしさがわからないことが多いです。『なんだかおかしい・・』とわかってきたころには保証期間が終わってしまい諦めてしまうこともよく聞く話です。
かもめカメラの5つのお約束
フィルムカメラ修理は業界の資格や規定などがないので、明確な決まりごとのないサービスです。修理屋さんによって修理の質や出来上がる写真に大きな違いがでるので、料金の安さだけで比較することはおすすめできません。安心して修理をご依頼いただくために、かもめカメラでは「5つのお約束」を独自に設定しております。
当社かもめカメラの修理料金は相場よりも1,000円ほど高いことがあるかもしれませんが、コスパを考えると絶対にお安いとおすすめできます!
① 6か月保証いたします
日本には四季があり、同じ場所でも温度や湿度が大きく変化します。それで古いフィルムカメラは、冬場はきちんと動いていたのに、夏になったら動かなくなるということがよくあります。かもめカメラでは長期の使用に耐えられることを念頭において修理しています。それで修理終了時期から、季節が変わるであろう半年間を無料保証期間としています。修理が終わったカメラを、半年間たっぷり使って調子を試してください。
② 専用検査機を使って調整します


きれいな写真、自分の思い通りの写真を撮るには、カメラの「シャッター速度・露出計の動作・絞りの動作」この3つがしっかり連動する必要があります。
この3つが正常に動いているかは、人間の眼では確認できないことがほとんどです。専用の試験機で、数値で表示させないととわかりません。この試験機が7桁近くする高価なもので、現在日本で製造しているメーカーもほとんどありません(もうないといってもいい状況です)。
かもめカメラではすべての修理を試験機にかけて調整しています。
③ 検査修理票をお付けします


かもめカメラでは修理をしながら、試験機で行った検査の結果数値とその他目視で行う動作確認を修理票にまとめながら修理を行っています。
そのカメラのシャッター速度や、オートで撮った時の露出計の状態などを数値で表示したものです。
この修理票をお付けしてお返しします。通常では修理屋さんでは絶対にお客様にお見せしないものですが、お客様に安心してお使いいただくために、かもめカメラでは修理票の実物コピーをお付けします。
④ 見て見ぬふりはしません
古いフィルムカメラの修理をしていると言い方がわるいですが、このまま修理しないでお返ししても「きっとお客様は気づかない箇所」がたくさんでてきます。少なくとも保証期間内は影響がでないだろうと思われる箇所もあります。
かもめカメラではこうした箇所も、見過ごさずしっかりと整備いたします、これは性分です。きちんと整備し、修理票に記録してお返しします。
またそれに伴い追加の部品交換などの必要が出た場合もお客様にご相談して対応いたします。
⑤ 全体をクリーニングしてお返しします
かもめカメラは動作・機能を回復させるところまでで完成とは考えておりません。数十年たったカメラを気持ちよく利用していただくために、外装もできる限りのクリーニングをしてお返しします。かなりきれいになります!お楽しみに!!もちろん最後に除菌も行って送付いたします。
追加料金になりますが、ご希望によってお好きなカラーで張り替えることもできますのでご相談ください。
かもめカメラのフィルムカメラ修理の料金一覧
当社かもめカメラは、全体修理をお受けしております。以前は以下に具体的な金額を入れておりましたが、料金個々の状況により、上記よりも安くなる場合もあれば、そうでないケースもあります。それでここに価格は個々にお見積りさせていただくこととしました。誠実なお見積りを心がけておりますので一度お問い合わせください。
| 一眼レフ | お見積り下さい |
| レンジファインダー機 | お見積り下さい |
| コンパクト機 | お見積り下さい |
| モルト交換 | お見積り下さい |
| その他部分修理 | お見積り下さい |
| レザー張り替え | お見積り下さい |




